Webサイトやアプリでユーザーに何か入力してもらったり、何か行動をお願いする機会があると思います。ユーザーが高いモチベーションを持って、行動してもらうためにはどのように全体設計をするのがいいのでしょうか。
そのヒントの一つがダニエル・ピンク(Daniel H. Pink)がTEDでプレゼンテーションしたThe puzzle of motivationという中に示されています。
やる気に関する驚きの科学
The puzzle of motivation
その中で語られていることを簡単にまとめると以下の3つになります。
- 20世紀的な動機づけは驚くほど狭い範囲にしか合わない
- If Then式の報酬は時にクリエイティビティを損なってしまう
- 高いパフォーマンスを出す秘訣は報酬と罰ではなく見えない内的な意欲にある
ロウソクの問題
Candle problem
カール・ドゥンカー(Karl Duncker)が行なったロウソクの問題という有名な行動科学の実験があります。絵のような状況で
「机に蝋がたれないように、ロウソクを壁に取り付けてください」
という問題を被験者に出します。あなたならどのようにするでしょうか?壁にロウを垂らしますか?画鋲で壁にロウソクを固定しますか?(答えは画像をクリックしてください)
The candle problem (Karl Duncker, 1945)
この問題を応用してグラックスバーグ(Sam Glucksberg)がある実験を行なっています。
2つのグループに同じ問題を出し、1つのグループにはこの問題を解くのにどれくらいの時間がかかるのか平均時間を知りたいのだと伝えます。もう1つのグループには「上位25%の人には5ドルの報酬を渡します、1番の人には20ドルの報酬を渡します」と伝えます。
さてどちらのグループが早く問題を解くことが出来たのでしょうか?
結果は報酬がないほうのグループが3分半も早く問題を解くことが出来たのです。人々により多くの成果を出してもらうには報酬、インセンティブを払えばいいと思っている我々ビジネスの世界では考えられないことが起きました。この実験でさらに興味深いのは40年にも渡って検証されてきたことです。「たまたま」ではないのです。
次に画鋲が箱に入っていない状態且つ同じ条件で実験をするとどうなるでしょうか。
すると今度はインセンティブを与えられたグループが早くなるのです。なぜなら画鋲が箱に入っているうちは箱は画鋲の入れ物という意識が強く働きますが、画鋲と箱が別々になると箱を使うという意識が簡単に働くようになるからです。
つまりインセンティブは答えが決まった分かりやすい左脳的な仕事に働き、一見して答えが分かりにくいもしくは答えが分からないクリエイティブな右脳的な仕事にはインセンティブは働きにくいということです。
内的報酬とは
Intrinsic Reward
ではどうすれば人々は高いモチベーションをもって行動するのでしょうか。
ダニエル・ピンクは以下のように述べています
- AUTONOMY(自主性)自分の人生は自分で決めたいという欲求
- MASTERY(成長)何か大切なことについて上達したいという欲求
- PURPOSE(目的)私たち自身よりも大きな何かのためにやりたいという切望
WikipediaとEncarta
1990年代半ばに莫大な予算を使ってマイクロソフトはEncartaという百科事典を作っていました。その後ご存知の通り1ドルも支払われない全く異なるシステムでWikipediaという百科事典が作られました。当時普通に考えたら結果はマイクロソフトが勝利すると思われていました。ところがご存知の通りその後マイクロソフトは撤退し、Wikipediaが勝利しました。
日本でも同様のことが起こっています。数年前に楽天レシピが楽天ポイントというインセンティブをぶら下げてクックパッドに勝負を挑んだことがありました。その結果はどうだったでしょうか。
私たちは経験上、外的報酬を与え人々に行動を促すようにしがちです。ただ科学的にはルーチンワーク的なあるいはある課題を達成するために所定のプロセスに従う仕事には外的報酬は向いていますが、クリエイティブな仕事には外的報酬は向いていません。現代では先進国の70%がクリエイティブな仕事に従事していると言われます。
WebやアプリでのサービスにおいてもUIやUXを設計する段階で動機やインセンティブについて議論されることがありますが、多くは外的報酬について話し合われることが多く見受けられます。一旦外的報酬から離れ、そのサービスにとっての内的報酬について議論し、それを機能やUI、UXに落とし込んでみてはいかがでしょうか。
いかがだったでしょうか。新しいWeb、アプリでのサービスを設計する時はユーザーの動機について議論する時があると思います。外的報酬に考えが寄りがちですが、あらためてそのサービスの内的報酬は何かということを考えてみることは重要だと思います。
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